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人工知能に「文学の批評」は可能か

2020.07.27
人工知能に「文学の批評」は可能か
Gerd AltmannによるPixabayからの画像 
     ≪7/26
日経「文化時評」より

10年すればAIが良しあしを語る 
人間の批評する力はどうだろう

松山市の出版・イベント会社、マルコボ.コムの季刊誌「俳句の缶づめ」の選句・投句蘭「ザ・句会」には、人工知能(AI)が作った俳句が会員読者の作品にまじって載っている。

「鶴」を兼題とした2020年4月号で「AI一茶くん」の句は次の通り。

「さみしさをゆたかに鶴の眠りけり」

誌上句会では、読者に「この句が一番!」と思う作品を一句選んでもらっていて、選評とともに紹介している。今回、AI俳句は4人に選ばれた4点句となった。最高の5点句が2作あったが、4点句はそれに続くもので、全81作中3位タイの好成績といえる。「さみしさを」と「ゆたかに」を組み合わせた点が新鮮に映ったようだ。

AI一茶くんは、17年から研究に取り組む北海道大学大学院情報科学研究院の川村秀憲教授らのグループが開発した。アルファ碁が世界トップ級の囲碁棋士を破ったことで一躍有名になったディープラーニング(深層学習)という手法により、大量の俳句データを学習。言葉のつながり、五七五という定型への合致、季語の有無などを判断して、俳句を「生成」するものだ。

18年1月、NHKのテレビ番組で人間とAI一茶くんが写真を見て俳句を詠むという対決をした(放送は2月)。「小林一茶、正岡子規、高浜虚子という江戸から近代にかけての俳人のデータを取り込んだため、『こんな言葉は今は使わない』と言われ、AIの惨敗でした」と川村さんは振り返る。

そこで17年の学生俳句チャンピオンである大塚凱さんの協力を得て、彼ら現代俳人の作品を学習データとして取り込んだ。18年7月には北大で「しりとり俳句」の形で人間とAIが再戦。前句の最後の2文字を引き継ぐ形で交互に5句ずつ詠み合った。俳人4人が担当した審査で、合計点では人間が勝利したが、最高点をとったのはAIが作ったうちの一句「かなしみの片手ひらいて渡り鳥」だった。

「俳句の缶づめ」編集長で俳人のキム・チャンヒさんは前述のテレビ番組で人間代表の一人としてAI一茶くんと対決したのをきっかけに、北大の研究者と交流を持つ。「AI俳句の進化は速い。ときに人間が思いつかないような言葉の組み合わせがあります」

作句では長足の進歩を見せるAIだが、どの句が優れているかを判断する批評となると話は別だ。19年9月、AI一茶くんは石川県加賀市の吟行句会に参加した。研究者が現地を訪れ、撮影した30枚ほどの写真に基づきAIに俳句を生成させ、その中からベストと考える作品を自ら選ばせた。AIは「天心に川を引くなり秋の風」「二人出て水のつめたき春の川」の2句で勝負したが、人間の選者はこれを評価せず、逆に「季節が合っていない」など問題点を指摘した。

「普段はAIが生成する大量の俳句の中から詳しい方々に選んでいただいている。 しかし、その時は選句もAIがやってほしい、というお話だったのでそれに応えたが、うまくいかなかった」。川村さんは批評面の課題が大きいことを認める。

実際「俳句の缶づめ」に載るAI俳句も、一茶くんが詠む200句の中から編集室が「これぞ」と思う一句を選んでいる。作句は何とかなっても、批評は人間に及ばないというのが実態のようだ。それもあって北大チームはキムさんらの協力を得て、AIが詠んだ恋の句を人間に評価してもらうイベントを開き、それをデータ化した。

川村さんは「あと10年もすればAIが句会に参加して、それぞれの作品の善しあしを語り合えるようになるのではないか」と期待する。

一方、人間の批評する力はどうだろう。文学全般で見れば、残念ながら弱くなっているのではないか。かつては一人の文芸評論家がその方向性をさし示していた時代が確かにあったが、今はそういう状況にない。長年にわたって有力な評論家を輩出してきた「群像新人評論賞」(旧・群像新人文学賞評論部門、講談社)も、19年度は「当選作なし」だった。その分、作家の自由度が増したのかもしれないが、やはり創作と
批評は両論であるべきだ。

19年5月に亡くなった文芸評論家の加藤典洋さんは「僕が批評家になったわけ」でこう記している。「批評とは、本を一冊も読んでなくても、百冊読んだ相手とサシの勝負ができる、そういうゲームだ」。頼りにすべきなのは自分の感性と思考だと考えていた。

今のところ、この感性と思考に関してはAIよりも人間の方が勝っているはずだ。しかし、AIの進化を考えれば、人間も安閑としていられない。







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